動画制作の見積書が比べられないときは|6つの条件をそろえて出し直してもらう
何社かから取った動画制作の見積書が、金額も項目もばらばらで比べられない。そんなときは、撮影日数や修正回数など6つの条件をそろえて、全社に見積もりを出し直してもらいます。制作会社に送る文面と、選んだ理由を上司に説明する書き方をまとめました。
3社から動画制作の見積書が届いたのに、並べてみても比べられない。
A社は「撮影費」「編集費」と細かく行が分かれているのに、B社は「制作一式」の1行だけ。
合計金額も、3社ともばらばらです。
それでも上司からは「で、どこがいいの?」「なぜこの会社にするの?」と聞かれますよね。
まず見たいのは、各社がどんな作業を見積もっているかです。
たとえば同じ「3分の会社紹介動画」でも、A社は撮影を1日、B社は半日で見積もっていることがあります。
半日と1日では、スタッフの人件費も、カメラなどの機材の費用も変わります。
合計金額だけを並べても、同じ作業の値段が違うのか、入っている作業そのものが違うのかは分かりません。
撮影の日数や修正の回数といった条件をそろえて、各社にもう一度見積もりを頼んでみてください。
まだ決めきれない条件は、仮でかまいません。
同じ条件で出し直してもらえば、見積書を並べて比べられます。
弊社は、映像制作とWebマーケティングの会社で、見積書を作る側にいます。
この記事で答えるのは、次の4つです。
- 3社の金額が、なぜこんなに違うのか
- 出し直しを頼むとき、制作会社に何を伝えればいいのか
- 撮影した映像や、編集に使った作業ファイルを受け取れば、あとで別の会社に修正を頼めるのか
- 出し直してもらった見積書を、上司にどう説明すればいいのか
調べて分かった事実と弊社の考えは、分けて書きます。
1. 見積書に書かれていなくても、料金に入っている作業がある
動画には、ナレーション(映像に合わせて流れる説明の声)を入れることがあります。
A社の見積書には「ナレーション費」の行があるのに、B社には見当たらない。
ただ、B社の動画にナレーションが付かないとは限りません。
B社の見積書は、次のどれかかもしれません。
- 編集費に入れている
- 「一式」の中に入れている
- そもそもナレーションを入れない動画として見積もっている
B社には、「ナレーションの費用は、この見積もりに入っていますか」と聞いてみてください。
弊社は、見積もりに入れている作業が会社ごとに違うことが、合計金額の差の多くを生んでいると見ています。
「一式」や「諸経費」の行は、何が入っているかを聞く
「編集一式」と書かれていても、どこまでの作業が入っているかは会社によって違います。
「一式」は、いくつかの作業をまとめて1つの金額にした書き方だからです。
たとえば、画面の明るさや色味をそろえる作業や、声と音楽の音量を整える作業まで「編集一式」に入れる会社もあれば、別の行に分ける会社もあります。
見積書に「MA」という行があれば、それが、この音量を整える作業です。
「一式」や「諸経費」とだけ書かれた行があれば、「この金額には、どんな作業や費用が入っていますか」と制作会社に聞いてみてください。
金額が妥当かを知りたくて、ネットの相場表と比べたくなるかもしれません。
ただ、動画制作の相場表は、ほとんどが撮影日数や修正回数を書いていません。
手元の見積書と同じ条件なのかが分からないので、この記事には相場の金額を載せていません。
2. 各社に伝える条件は、次の6つをそろえる

弊社も見積書を作る側なので、条件が決まっているほうが正確な金額を出せます。
各社に伝えるために、次の6つを書き出してみてください。
撮影に何日要るかなど、担当者だけでは決めきれない項目もあると思います。
まずは仮の数字でかまいません。
仮でも全社に同じ条件を伝えれば、見積書を比べられます。
制作会社から「この条件では難しい」と言われた項目は、理由を聞いてから決め直します。
条件1 動画の長さと本数
動画は何分で、何本要るかを書き出します。
SNS用の短い版も要るなら、最初から本数に入れます。
あとになって「短い版も作って」と頼むと、追加費用になりやすいからです。
条件2 撮影の日数と場所
撮影は半日か、1日か。
本社だけで撮るのか、工場や店舗でも撮るのか。
日数を決めきれなければ、仮の日数でかまいません。
条件3 出演者
動画に出るのが社員だけか、社外の出演者にも頼むのかで、金額も手配も変わります。
次の4つを書き出します。
- 出演するのは社員だけか、社外の出演者にも頼むか
- 頼むなら何人で、何時間来てもらうか
- ナレーションを誰が読むか
- 出演者が事務所に所属しているか
事務所に所属している出演者だと、動画を使える期間と媒体に制限が付きます。
社員に出てもらう場合も、動画をどこで、いつまで使うかを伝えて、本人から書面で同意をもらってください。
退職したあとも動画を使い続けてよいかも、撮影の前に本人と話しておきます。
条件4 修正の回数
たとえば、広報部が確認して1回、そのあと役員が確認してもう1回修正を頼むなら、修正は2回要ります。
社内で誰が、どの順番で動画を確認するかを考えて、必要な回数を伝えてください。
多くの会社では、決めた回数を超えた分が追加費用になります。
条件5 受け取るファイルと、動画を使える範囲
完成した動画のほかに、撮影した映像や編集のためのファイルも受け取れるか。
動画を、どこで、いつまで使えるか。
ここは見落とされやすいので、見積もりの段階で確かめておきます。
ここでいう素材は、撮影したままの、編集する前の映像のことです。
編集データは、編集ソフトの作業ファイルで、完成した動画のmp4とは別の、編集をやり直すためのファイルです。
- 完成した動画の著作権を、自社と制作会社のどちらが持つか
- 素材を、あとで受け取れるか
- 編集データを受け取れるか
- 動画を使える期間は1年までか、期限なしか
- 自社サイトのほかに、テレビCMや交通広告でも使うか。海外でも使うか
別の会社に、あとで修正を頼みたいなら、素材や編集データを受け取れるかだけでなく、著作権も確かめておく必要があります。
条件6 ファイルの形式・字幕・縦横
- ファイルの形式(mp4など)
- 字幕(話す言葉を表示する文字のこと)を付けるか
- 横型のほかに、縦型や正方形の動画を何種類作るか
縦型や正方形も作ると、その分の手間が増えます。
SNS用の短い版と同じく、あとから頼むと追加費用になりやすいので、最初の見積もりに入れてもらいます。
3. 素材や編集データを受け取っても、別の会社で修正できるとは限らない
素材や編集データを受け取ることと、それを使って作り直してよいことは、別の話です。
別の制作会社に、あとで修正を頼む可能性があるなら、契約書も確かめてください。
受け取った映像やファイルを使って、作り直してよいかを確かめます。
日本の実務では、完成した動画の著作権は制作会社に残るのが基本です。
自社に移したいなら、契約書に書いてもらいます。
ただし、「著作権は当社に帰属する」と書くだけでは足りません。
ここでの「当社」は、発注する自社のことです。
次の2つの権利も、譲渡する権利として契約書にはっきり書いておく必要があります。
- 翻案権(できた動画に手を加えて、別の動画にする権利。著作権法27条)
- 著作権法28条の権利(そうして作った動画を使う権利)
著作権法61条2項では、この2つを書いておかないと、譲渡した側に残ると推定されます。
ここでいう譲渡した側は、制作会社です。
推定されるとは、反対の証拠が無いかぎり、そう扱われるという意味です。
もう1つ確かめたいのが、動画を作った側(制作会社など)が持つ「著作者人格権」です。
自分の作品を勝手に作り変えられないための権利で、人に譲ることはできません。
そこで、作った側が「著作者人格権を行使しない」と約束する一文も、契約書に入れてもらいます。
27条と28条の権利を譲渡すると書いても、この一文が無ければ、作った側が作り変えを止められる場合があります。
契約書を整えても、別の会社で編集データをそのまま開けるとは限りません。
開けたとしても、文字の形などが、元の会社で開いたときと同じになるとは限りません。
編集ソフトのバージョンや、ソフトに追加する機能(プラグイン)、フォントが元の会社と違うと、同じようには表示されません。
使った音楽や写真は、元の制作会社が使う許可を取ったものなので、次の会社がそのまま使えない場合もあります。
著作権の譲渡や、著作者人格権を行使しない条件を求めると、見積もりの金額が上がることもあります。
この条件を希望するなら、最初に見積もりを頼むときから伝えてください。
テレビCMや交通広告でも使いたいなら、バイアウトができるかを先に聞く
動画を、期間や媒体の制限なく使いたい。
そのために、出演者などに払う料金を、あらかじめまとめて払っておく契約を、バイアウトと呼びます。
ただし、出演者が事務所に所属している場合は、バイアウトを断られたり、金額が大きく変わったりします。
日本モデルエージェンシー協会は、加盟する事務所について、買い取りと無期限使用のどちらにも応じられないと公表しています。
ここでの「買い取り」は、動画を期間の制限なく使う権利をまとめて買う、バイアウトのことです。
将来テレビCMや交通広告でも使いたいなら、その予定を制作会社に伝えて、出演者の事務所がバイアウトに応じるかを、金額より先に確かめてもらってください。
4. 出し直しは、全社に同じ文面で頼む
「一度出してもらったのに、もう一度頼んでいいのか」と迷うかもしれません。
弊社は見積書を作る側として、条件をそろえて比べるための出し直しを、失礼だとは考えていません。
「各社を同じ条件で比べたい」と理由を添えて、全社に同じ文面を送ってください。
下の文面の数字や「本社のみ」などは、自社の予定に書き換えて使えます。
各社の見積もりを同じ条件で比べたく、下記の内容で、あらためてお見積もりをお願いできますか。
- 動画の長さと本数:本編3分×1本、SNS用30秒×2本(本編から30秒の場面を2つ選んで、短い動画にする)
- 撮影:1日、本社のみ
- 出演者:社外の方1名に半日来ていただく。ナレーションは、出演者とは別に外部の方に依頼。どちらも手配からお願いしたい
- 修正:2回まで
- 素材と編集データ:完成した動画と一緒に受け取りたい
- 著作権:翻案権(27条)と28条の権利を含めて、当社へ譲渡できるか。著作者人格権を行使しない旨も契約に入れられるか
- 使用期間と媒体:自社サイトとSNSで、期限なし。将来テレビCMに使う可能性あり
- 納品:本編3分は横型、SNS用30秒は縦型。どちらも字幕あり
この条件で難しい項目があれば、その理由も添えていただけると助かります。
撮影・編集など作業ごとの金額と、当日来るスタッフの人数と担当も書いていただけますか。
「一式」や「諸経費」の行がある場合は、何が入っているかも教えてください。
5. 高い理由を聞き、その作業が今回の動画に必要かで選ぶ
見積書が届いたら、頼んだ条件がすべて入っているかを確かめてください。
特に見たいのは、「難しい」と返ってきた条件と、その理由です。
著作権が制作会社に残る場合、動画をどこで、いつまで使えるかは、制作会社との取り決めの範囲になります。
そのため、著作権の譲渡や希望した使用期間に応じられない会社だと、合計が安くても、あとからテレビCMなどに使えない可能性があります。
同じ条件で頼んでも、撮影に来るスタッフの人数や担当は、会社ごとに違います。
作業ごとの金額を並べると、同じ作業の値段が違うのか、片方にしか無い作業があるのかが分かります。
たとえばB社の撮影費だけが高いとします。
B社だけが照明の担当者(撮影用のライトを置いて明るさを整える人)を入れていれば、差はその人件費です。
高い見積もりにだけ入っている作業が、今回の動画に必要かを考えます。
必要なら、その費用をかける理由になります。不要なら、安い見積もりを選ぶ理由として説明できます。
必要かどうか自分では分からないときは、高い会社に「この作業が無いと、できあがりはどう変わりますか」と聞いてみてください。
上司には、差額の理由と、その作業が必要な理由を伝える
稟議の資料には、合計金額に加えて、次の3つを書いてください。
- 各社に送った条件
- 差額が何の費用なのか
- その作業が、今回の動画になぜ必要なのか
たとえば次のように書けます。
3社に同じ条件で見積もりを出し直してもらいました。送った条件は別紙のとおりです。
今回はB社にお願いしたいと考えています。
B社の見積もりは3社の中で最も高く、A社が最も安くなっています。
両社の差額は、撮影に照明の担当者が入る分の人件費です。
今回は窓の無い会議室で撮るため、照明の担当者は必要と判断しました。
C社からは、著作権の譲渡は難しいと回答がありました。将来テレビCMに使えない可能性があるため、候補から外しています。
これなら、A社より高いB社を選ぶ理由を、「照明の担当者が必要だから」と説明できます。
まとめ
上司に説明したいのは、各社の合計金額だけではありません。
差額が何の費用で、その作業が今回の動画になぜ必要なのかです。
そのために、まず全社に同じ条件を伝えて見積もりを出し直してもらい、残った差について作業ごとの金額を聞いてください。
手元の見積書に「制作一式」のような行があれば、まずは「この金額には、どんな作業や費用が入っていますか」と聞いてみてください。
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