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AI動画制作は企業で使える?自社の商品や社屋が映る映像もAIで作っていいのか

制作会社から「AIで安くできます」と提案されたとき、自社の商品や本社が映る場面までAIで作ってよいのか。見る人が「この会社の商品や建物だ」と受け取る場面は撮影し、自社のものでなくてもよい場面はAIで作る、という目安と、AIの映像に修正を頼むときの注意、見積もりを頼むときに制作会社へ伝える文面をまとめました。

制作会社の担当者が、企業の広報担当に絵コンテを見せて提案している打ち合わせのイラスト

「この動画の一部はAIで作れるので、その分安くできます」
制作会社からこう提案されたら、予算の面ではありがたいですよね。
ただ、「うちの商品も、ちゃんと同じ形に映るの?」「本社ビルが本物と違って見えたら困る」という点は気になります。

自社の商品や本社をどう見せるかは、場面ごとに考えます。
1本の動画の中で、撮影する場面とAIで作る場面を、制作会社と決めていけます。

たとえば、自社の商品を手に取って見せる場面や、本社の入り口は撮影します。
朝の街並みや、自社のオフィスでなくてもよい場面なら、AIで作っても困りません。

判断の目安は、見る人が「この会社の商品や建物だ」と受け取る場面かどうかです。

弊社は、企業の映像制作とWebマーケティングを手がけています。
この記事で答えるのは、次の4つです。

  1. 自社の商品や社屋をAIで作ると、どう映るのか
  2. AIで作った映像に「ここだけ直して」と頼むと、何が起きるのか
  3. 撮影には、社内でどんな準備や調整が必要なのか
  4. 見積もりを頼むとき、制作会社に何と伝えればいいのか

調べて分かった事実と弊社の考えは、分けて書きます。


1. 自社の商品をAIで作ると、よく似た別の商品が映る

この記事で扱うのは、文章で指示して映像を作る動画生成AIです。
たとえば「オフィスで2人が話している映像」と入力すると、その映像を作ります。

「オフィスで人が話している」といった場面は、AIでもそれらしく作れます。
たくさんの映像や画像を手本にして作られているためです。

ただ、自社商品の形を文章で伝えても、出てくるのは、よく似ているけれど実在しない別の商品です。
文章だけでは、商品の形や色、ロゴまで細かく伝えきれないからです。
ロゴの文字やボタンの数が少しでも違えば、その商品を知っているお客さんは「いつもの商品と違う」と気づきます。

AIに商品写真を1枚見せて、それに近い形で作らせる方法もあります。
商品を映した動画を何本かAIに読み込ませて、その商品の形を覚えさせる方法もあります。
動画生成AIのLTXには、この覚えさせる方法として「LoRA学習」と呼ばれる仕組みがあります。
ただ、どちらの方法でも、実物とまったく同じ形になる保証はありません。

商品や社屋のほかにも、実物どおりに見せる必要があるものがあります。

  • 工場で働く人のヘルメットや命綱は、形が違えば誤った情報を伝えてしまいます
  • 食品の原材料表示など、法律で書き方が決まっているものは、文字の正しさも問われます
  • 他社の商品や地図、グラフの数字も、実物や資料と一致している必要があります
  • 採用やIR(投資家向けの情報)の動画、医療・金融の動画に登場する人は、実在の社員や専門家だと受け取られます

こうした場面は撮影するのが安全です。地図やグラフは、元の資料をもとに編集で作ってもらいます。

反対に、撮影できないものもあります。
たとえば、発売前でまだ完成品が無い商品や、工事中の新社屋です。
危険で人が入れない工場の作業も撮影できません。
こうした場面は、完成予想や「イメージ」として見せるなら、AIを使う手があります。
ただし、実際に撮影した映像ではないと分かるように見せます。
たとえば、画面に「イメージです」と入れる方法です。

社内の写真や発表前の資料を動画生成AIに渡してよいかは、AIツールの利用規約についての記事に書きました。


2. AIで作った映像は、修正を頼んでいない部分まで変わることがある

弊社が試した範囲では、AIで作った映像の色合いだけ、映像の中に出てくる文字の形だけを後から変えようとしても、そこだけを変えることはできませんでした。

撮影した映像なら、「画面を少し明るくして」と頼めば、編集で明るさを直します。
映っている人や背景は、撮ったときのまま残ります。

AIで作った映像は、修正のたびにAIがもう一度映像を作ります。
そのため、「人の服の色だけ変えて、背景はそのままにして」と頼んでも、背景の木や建物まで変わってしまうことがあります。

1か所だけ直したいのに、ほかの箇所が変わってしまう例の図。左の映像で花だけを変えたいと頼んで作り直すと、右の映像では花のほかに木や家、空の様子も変わっている

ここから先の話は、動画生成AIを提供している会社の公開資料にある説明です。
弊社でそれぞれのAIを使い比べた結果ではありません。

AIは、同じ指示でも作るたびに少しずつ違う映像になります。
では、前と同じ映像をもう一度作ることはできるのでしょうか。
AIで映像を作るときには、映像の出方を決める「seed(シード)」という番号が使われます。
前に作った映像と同じseedを指定すれば、同じ映像をもう一度作れるのか。
この点の説明が、会社によって違います。

  • Googleの動画生成AI「Veo」:同じseedを指定すれば、同じ映像を作れる
  • 動画生成AIを提供するRunway:似た動きにはなるが、同じ映像になるとは限らない

さらに、AIのバージョンが変わると、同じseedでも違う映像になります。

なお、2025年からは、映像の中の物を消したり、物を足したりする機能も出ています。
Runwayの「Aleph」や、GoogleのVeoにある「追加・削除」です。
ただし、消した物のあとに入る背景も、追加した物も、AIが新しく作ります。
修正した部分以外がどこまで元のまま残るかは、実際に試してみないと分かりません。

たとえば、撮影する動画と同じように「修正は2回まで」という契約にしたとします。
こちらがまとめて修正を伝え、制作会社が直すのを1回と数える契約です。
ただ、AIで作る場面が、その2回で思いどおりになるとは限りません。

制作会社には、修正の回数だけでなく「一部だけ直したとき、ほかの部分はそのまま残せますか」と聞いてください。

撮影なら、その場に立ち会って「もう少し明るく」と頼めます。
AIでは、まず映像ができるのを待ってから確認します。
動画全体が完成する直前まで社内で確認できないと、その段階で大きな作り直しになるかもしれません。

契約前に、「いくつかの場面ができた段階で、一度見せてもらえますか」と制作会社に相談しておきましょう。


3. 撮影には、社内の準備や調整も必要です

撮っていない場面をあとから追加するには、再撮影が必要です。
出演者の予定や天気によっては、同じ場所でも、同じ日差しや明るさでは撮れないかもしれません。

撮影には、社内でも次のような準備や調整が必要です。

  • 社外の場所で撮るなら、場所の持ち主に許可を取り、日程を合わせる
  • 工場や店舗で撮るなら、撮影中は作業を止めるか、撮影のために同じ作業を繰り返してもらう
  • 社員に出てもらうなら、その人の予定を半日から1日あける

社員に出てもらうときは、その映像をどこで、いつまで使ってよいかを本人と決めておく必要があります。
たとえば、会社紹介の動画を、あとで採用の広告にも使うかもしれません。
退職や異動のあとも映像を使い続けてよいかは、撮影の前に本人と決めておいてください。

撮影費用の多くは、撮影や照明のスタッフ、カメラなどの機材、社外の撮影場所の手配にかかっています。
弊社は、AIで作る場面では撮影スタッフや機材が要らなくなることが、「安くできる」理由だと考えています。

撮影する場面とAIで作る場面では、あとから直すときの手間が次のように違います。

  • 撮影する場面:撮った映像の明るさや色合いは、編集で直せる。ただし、新しい場面が要るなら再撮影になる
  • AIで作る場面:撮影の手配は要らない。ただし、一部だけを狙いどおりに直せるとは限らない

弊社は、安さだけでなく修正の手間も含めて、場面ごとに撮影かAIかを選べばよいと考えています。


4. 海外で使う動画は、AIで作ったことの表示も確認する

海外向けの広告や展示会で、この動画を使う予定はあるでしょうか。
AIで作る場面を決めたら、海外での使用予定も確認してください。

EU AI法の第50条では、AIで作った映像だと分かるように示すことが求められています。
2026年8月2日から適用されています。
対象には、実在の人に似せた映像だけでなく、実在の場所や建物、出来事に似せた映像も含まれます。

AIで作ってよいと考えた街並みの場面でも、表示が必要になる場合があります。

中国でも2025年9月から、AIで作った内容には、そのことが分かる表示を付ける規則が適用されています。

動画を使う国や地域で、こうした規則が適用されるかは弁護士に確認してください。
日本向けのサイトに載せた動画が海外から見られる場合も、確認が必要です。
画面に文字を入れるのか、動画を載せるページの説明文に書くのかなど、表示の場所と方法もあわせて相談してください。


5. 見積書では、撮影する場面とAIで作る場面を分けてもらう

制作会社の提案書には、どの場面を何秒、どう映すかを並べた一覧表が付いていることがあります。
これを「カット表」と呼びます。
付いていなければ、見積もりの前に出してもらってください。

ここまでの目安で、カット表の場面ごとに「撮影」「AI」「制作会社に相談」と書き込んでみてください。
迷った場面は「制作会社に相談」でかまいません。
そのうえで、制作会社には次のように頼めます。

撮影する場面とAIで作る場面を分けて、場面ごとの金額を出していただけますか。
AIで作る場面については、撮影した場合の金額も並べていただけると助かります。
あわせて、次の3つも教えてください。
・AIで作る場面に修正を頼んだとき、ほかの部分をそのまま残せるか
・決めた回数の修正で思いどおりにならなかったとき、費用はどうなるか
・海外で使う場合に、AIで作ったことをどう表示するか

同じ場面について、AIと撮影の金額を並べてもらえば、どこでいくら安くなるのかが分かります。
届いた見積書をほかの会社と比べるときの見方は、動画制作の見積書を比べる記事に書きました。


この記事で紹介していないこと:AIで1回に作れる映像の長さ

1回の指示で何秒の映像まで作れるかは、AIごとに違います。弊社で試していないため、ここには載せていません。
同じseedでどこまで同じ映像になるかも、弊社では確かめていません。第2章のseedと修正機能の話は、各社の公開資料にある説明です。

なお、弊社は最初この記事に「AIでは映像の一部だけを直せない」と書いていました。
2025年7月以降、その機能を持つツールが出ていたので書き直しています。
この分野の情報は、記事を書いたあとも変わっていきます。


まとめ

「AIで安くできます」と提案されたら、まず、どの場面をAIで作る予定なのかを確認してください。
自社の商品や建物として見せる場面は撮影し、自社のものでなくてもよい場面はAIで作ってもよい。
まだ完成していない商品や建物は、「イメージ」と分かる形ならAIで見せる手もあります。
この目安で、場面ごとに考えてみてください。

まずは提案書のカット表に、「撮影」「AI」「制作会社に相談」と書き込んでみてください。


このサイトは、映像制作とWebマーケティングの会社である株式会社OrangeJacketが運営しています。
弊社は撮影の仕事が中心なので、この記事の見方も撮影の側に偏っているかもしれません。

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